
こんにちは、院長の藤井です。
「ちょっと注意されただけで、激しく怒り出す」
「自分の思い通りにならないと、すぐに泣き叫んで手が出てしまう」
お子さんが感情を爆発させるたびに、「どうしてこんなに感情を抑えられないんだろう」「もう少し我慢できるようになってほしい」と、頭を抱えている親御さんも多いのではないでしょうか。
園や小学校などの集団生活の場では、周りのお友達と比べて、「どうして我が子はこんなに気持ちのコントロールが苦手なのだろう」と不安になったり、つい「泣かないの!」「我慢しなさい!」と強く叱ってしまったりすることもありますよね。
ですが、子どものこころの専門医として、まずお伝えしたいのは、
感情をコントロールできるようになるために必要なのは、ただ「我慢させること」だけではありません。
なぜ、感情が爆発してしまうの?
感情が大きく揺れ動いたとき、自分の中で気持ちを落ち着かせたり、切り替えたりすることが難しいお子さんがいます。
これは、単純に「我慢が足りない」「素直ではない」という問題ではありません。
子どもはまだ発達の途中にあり、強い感情が湧いたときに、それを自分で整理したり、気持ちを切り替えたりする力も、少しずつ身につけているところです。
また、「悔しい」「悲しい」「疲れた」「思い通りにならない」など、自分の中に起きていることをうまく言葉にできないこともあります。
そのため、気持ちを言葉で伝える代わりに、泣く、怒る、叫ぶ、手が出るといった行動として表れることがあります。
もちろん、感情が爆発する背景は一人ひとり違います。
だからこそ、「どうして怒るの?」と行動だけを見るのではなく、「この子は何が嫌だったのかな?」「何が難しかったのかな?」と、その背景を考えてみることが大切です。
「怒らないで」より大切なアプローチ
では、感情を上手に扱えるようになるために、家庭ではどのような関わりができるでしょうか。
① 感情が大きくなる前の「サイン」を知る
いきなり100%の怒りが爆発しているように見えても、その前に「声が大きくなる」「落ち着きがなくなる」「急に無口になる」など、小さな変化が見られることがあります。
お子さんによっては、表情が硬くなったり、その場から離れようとしたりすることもあります。
「うちの子は、どんなときに気持ちが大きくなりやすいのかな?」
「その前には、どんな様子があるのかな?」
と観察してみると、早めに気づけるサインが見つかるかもしれません。
② 「落ち着く方法」をあらかじめ一緒に探しておく
気持ちが大きくなっている最中は、大人からの言葉が入りにくくなることがあります。
だからこそ、比較的落ち着いているときに、
「イライラしたら、少し一人で休もうか」
「静かなところに行ってみようか」
「お水を飲んでみようか」
など、その子に合った「落ち着く方法」を一緒に考えておきましょう。
深呼吸が合う子もいれば、その場を離れるほうが落ち着く子もいます。
「こうすれば必ず落ち着く」という正解があるわけではありません。
その子に合った方法を探していくことが大切です。
③ 気持ちを「言葉にする」のを手伝う
「怒っちゃダメ」と制止するだけではなく、
「あ、今これが嫌だったんだね」
「悔しかったんだね」
「急に終わりと言われて、嫌だったんだね」
と、子どもの気持ちを大人が言葉にしてみることも役立ちます。
自分の気持ちを言葉で表現する経験を重ねることで、少しずつ「怒る」「泣く」「手が出る」以外の伝え方を身につけていくことがあります。
ただし、子どもが落ち着いていないときに「本当は悔しかったんでしょう?」と気持ちを聞き出そうとする必要はありません。
まずは安全を確保して、落ち着いてから一緒に振り返れば十分です。
お薬という選択肢もあります
環境の工夫や関わり方を試してみても、感情のコントロールの難しさが強く、かんしゃくやパニックによって日常生活や園・学校生活に大きな支障が出ている場合には、医療的なサポートを検討することもあります。
その一つとして、お薬を使う方法があります。
お薬によって、イライラしやすさや衝動性などが和らぐことで、本人が気持ちを落ち着けやすくなったり、周囲の声かけを受け止めやすくなったりすることがあります。
もちろん、薬を使えばすべて解決するわけではありません。
お子さんの状態や困りごとによって、薬を使うかどうか、どのような薬が適しているかは異なります。
「薬を使ったほうがいいのかな」と迷ったときも、一人で決める必要はありません。主治医と相談しながら、その子にとって必要な方法を一緒に考えていきましょう。
時間はかかっても、それは遠回りではありません
周りの子たちが上手に気持ちを切り替えている姿を見ると、「どうしてうちの子だけ……」と焦るお気持ちは、とてもよく分かります。
しかし、感情をコントロールする力は、一朝一夕で身につくものではありません。
「前より落ち着くまでの時間が短くなった」
「怒っても、手を出さずに言葉で伝えられた」
「一人で落ち着く場所に移動できた」
そんな小さな変化にも、その子なりの成長があります。
感情をなくすことが目標なのではありません。
怒りや悲しさ、悔しさなどの感情を持ちながらも、少しずつそれを扱う方法を身につけていく。
その積み重ねが、これから先、自分の気持ちと付き合っていくための力になっていきます。
「怒らない子」にすることが目標ではありません
子どもが怒ったり泣いたりすると、「このままでは困る」「もっと感情を抑えられるようにしなければ」と思ってしまいます。
でも、怒ることそのものが悪いわけではありません。
怒る、悲しむ、悔しがる。
それも、子どもにとって大切な感情です。
大切なのは、感情をなくすことではなく、自分の感情に気づき、少しずつ自分なりの方法で扱えるようになっていくことなのだと思います。
今日すぐにできるようにならなくても大丈夫です。
お子さんも、自分の中に湧いてくる大きな感情と、一生懸命付き合っているのかもしれません。
親御さんも、毎回うまく対応できなくて大丈夫。
一緒に考えながら、その子なりの方法を少しずつ見つけていけばいいのです。
怒らない子にするのではなく、怒ったときにも「どうしたらいいか」を少しずつ身につけていく。 その子なりのペースで大丈夫です。
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