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何度言っても動かない子。「やる気がない」のではないかもしれません

何度言っても動かない子。「やる気がない」のではないかもしれません|どんぐり発達クリニック|発達障害

何度言っても動かない子。「やる気がない」のではないかもしれません

こんにちは、院長の藤井です。

「早く着替えて!」「歯を磨いてって、何回言ったらわかるの?」「いい加減、宿題しなさい!」

何度声をかけても、返事すらしない。ゲームや動画に夢中で、一向に動く気配がない……。

そんなお子さんの姿に、毎日怒り続けてしまい、ヘトヘトに疲れている親御さんも多いのではないでしょうか。

「どうしてうちの子は、こんなにやる気がないんだろう」と、ため息が出てしまうこともあるかもしれません。

ですが、子どものこころの専門医として、まずお伝えしたいのは、

「動けないこと」と「やる気がないこと」は、同じではない

ということです。

子どもがなかなか動き出せない背景には、怠けやわがままではなく、実行機能や注意の切り替えの難しさなどが関係していることがあります。

なぜ「指示されても動けない」のか?

大人が「着替えて」と言われたときには、頭の中で「服を選ぶ→今の服を脱ぐ→新しい服を着る」という一連の行動を、ある程度自然に進めることができます。

一方で、実行機能に苦手さのあるお子さんにとっては、こうした一連の行動を自分で組み立てて始めることが、思っている以上に難しい場合があります。

たとえば、

課題が大きく感じられて、どこから始めればよいのか分からない

「宿題をしなさい」と言われても、どの教科から始めるのか、何を準備するのかなどを自分で整理することが難しく、動き出せなくなることがあります。

今していることから、次の行動へ切り替えることが難しい

大好きなゲームや動画から、「歯磨き」「着替え」「宿題」など、あまり気が進まない行動へ切り替えることには、意外と大きな力が必要です。

特に、注意の切り替えが苦手なお子さんの場合、「もう終わり」と頭では分かっていても、すぐに次の行動へ移ることが難しいことがあります。

子ども自身も「やらなきゃ」と思っているのに、動き始めるための最初の一歩がうまく踏み出せない

そんなことが起きているのかもしれません。

「やる気を出して」より、「始めやすくする」

こうした場合、「やる気を出して!」と叱るだけでは、なかなかうまくいかないことがあります。

それよりも、動き始めるためのハードルを下げてあげることが役立つ場合があります。

① 行動を小さく区切る

「着替えて」ではなく、

「まず靴下を履こう」
「次はズボンを履こう」

というように、行動を一つずつ具体的にしてみます。

「宿題をしなさい」ではなく、

「ランドセルから宿題を出そう」
「まず名前を書こう」

と、最初の一歩を小さくすることもできます。

② 「次は何をする?」と一緒に確認する

「早くしなさい!」と急かす代わりに、

「次は何をする時間だっけ?」

と問いかけて、次の行動を一緒に確認してみるのも一つの方法です。

ただし、ここで一つ知っておいていただきたい大切なことがあります。

親御さんが声かけを変えたからといって、お子さんの行動がすぐに大きく変わるわけではありません。

実行機能の特徴や生活習慣は、一朝一夕に変わるものではありません。

「声かけを変えたのに、今日も動かなかった……」と、親御さん自身を責める必要はありません。

「同年代」ではなく、「過去のその子」と比べてみる

何度言っても動かない日が続くと、親御さんもイライラして当然です。

そんなときは、少し視点を変えてみてください。

周りの同年代の子と比べると、「まだまだできていない」と感じるかもしれません。

でも、1年前、あるいは半年前のお子さんと比べてみると、どうでしょうか。

「前は声をかけても反応がなかったけれど、最近は『今やる』と返事ができるようになった」

「以前は泣き叫んでいたけれど、怒りながらでも自分で洗面所に向かえるようになった」

そんな小さな変化が見つかることがあります。

発達の変化は、いつも「一人でできるようになった」という形で現れるとは限りません。

返事ができるようになった。
見通しを持てるようになった。
助けを求められるようになった。
以前より短い時間で切り替えられるようになった。

こうした変化も、その子なりの大切な成長です。

大人だって、動き出せないことがあります

少し考えてみると、私たち大人にも、「やらなきゃと思っているのに、なかなか始められない」ということがありますよね。

「運動しなきゃ」と思いながら、ついスマートフォンを見てしまう。

「部屋を片付けよう」と思いながら、なかなか始められない。

「明日こそ早く寝よう」と思いながら、夜更かししてしまう。

大人でも、頭で分かっていることをすぐに行動に移すのは、簡単なことではありません。

ましてや、子どもはまだ発達の途中です。

「やらなきゃと思っているのに、動き出すのが難しいこともあるんだな」

そんなふうに考えてみると、お子さんを見る目が少し変わるかもしれません。

その子に合った「始めやすさ」が見つかれば、大丈夫

お子さんが動けないからといって、それだけで「やる気がない」と決めつける必要はありません。

もちろん、疲れている、興味が持てない、難しすぎる、見通しが持てないなど、動けない理由は一人ひとり違います。

だからこそ、「どうしたらこの子は動き出しやすいのだろう?」と、その子に合った方法を一緒に探していくことが大切です。

すぐにできるようにならなくても大丈夫。

昨日より少し早く動けた。
声をかけたら返事ができた。
自分から一歩だけ動けた。

そんな小さな変化を見つけながら、その子なりのペースで成長していけばいいのです。

「動けない=やる気がない」ではありません。
その子に合った「始めやすさ」を一緒に見つけていけば、大丈夫です。

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院長 藤井 明子
記事監修
院長 藤井 明子

北里大学医学部 卒、東京女子医科大学医学系大学院修了、東京女子医科大学病院、長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、さくらキッズくりにっく 院長、どんぐり発達クリニック 院長

医学博士、日本小児科学会 小児科専門医、日本小児神経学会 小児神経専門医、日本てんかん学会 てんかん専門医、日本小児精神神経学会 小児精神神経学会認定医、子どものこころ専門医

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