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こんにちは、院長の藤井です。
新年度が始まり、新しい環境に少しずつ慣れてきた一方で、家でのリラックスタイムにスマートフォンやタブレット、ゲームに触れる時間が長くなっているお子さんも多いのではないでしょうか。
先日、日本小児科学会の学術集会に参加し、教育講演の中で「ネット依存症教育の実践」について大変意義深いお話を聞いてきました。そこでの学びは、日々の診察室で親御さんからいただく「スマホばかり見ていて心配」「ゲームのやめ時が分からない」というお悩みに、直結する非常に重要なものでした。
今回は、子どもたちをネット依存から守るために家庭で実践したい「4つの大切なポイント」を共有させていただきます。
1.「娯楽のネットは依存物」という危険を認識する
まず私たち大人が強く認識しなければならないのは、「娯楽としてのネット環境は、アルコールやギャンブルなどと同じ『依存物』である*ということです。
ネットの世界は、子どもにとって「楽しい」「疲れない」「飽きない」の3拍子が揃っています。脳にとってこれほど手軽に快感を得られる刺激は他にありません。だからこそ、子どもの意志の力だけでコントロールするのは不可能なのです。
講演では、ネット依存が進行すると、感情や理性を司る脳の領域(前頭葉など)が物理的に「萎縮する」という衝撃的なデータも示されました。子どもの健やかな脳の発達を守るためにも、「ただの遊び」と軽く捉えず、依存のリスクがあるものとして扱う必要があります。
2.「平日1時間以下、週2日のノーメディアデー」という明確な制限
依存物である以上、家庭内での明確な「制限(ルール)」が不可欠です。講演でも推奨されていた具体的な目安は以下の通りです。
平日の利用は「1時間以下」にする
週に2日は「ノーメディアデー(ネットに触れない日)」を設ける
「そんなの無理!」と思われるかもしれませんが、大切なのは、最初に親子で話し合って納得したルールを作ることです。デバイスの機能を使って物理的にスクリーンタイムを制限するのも有効です。ダラダラと使い続けられる環境をなくし、脳をネットの刺激から完全に解放する日を作ってあげましょう。
3.「紙の本を読む(Return to Book)」の重要性
現在、GIGAスクール構想などで学校教育のデジタル化が進んでいますが、ここで注目したいのが世界的な教育のトレンドです。
デジタル教育で先行していた北欧諸国では、Screen inferiority(スクリーン・インフェリオリティ/画面の劣等性)」という問題が注目されています。(Delgado P,R,et al. Edu Res Rev.2018) 研究によって、タブレットや電子教科書を使った学習は、従来の「紙」を使った学習に比べて、子どもの集中力や記憶力、深い理解力が明らかに劣ることが分かってきたのです。そのため、海外ではいま「Return to Book(本に戻ろう)」という運動が広がっています。
ネットの世界は情報が受動的に流れてくるため、脳が深く思考することをサボってしまいます。一方で、紙の本をめくり、文字を追う行為は、脳のネットワークをフル活用させます。勉強はもちろん、読書や読解力の土台を作るためにも、意識的に「紙の媒体」に触れる時間を確保してあげてください。
4.親自身のネット時間を減らし、親子の会話を増やす
そして、最も耳が痛く、かつ最も重要なポイントが「親の背中」です。
講演の中で紹介された驚くべきデータがあります。子どもが長時間メディアに触れてしまう危険度(オッズ比)を調べたところ、
母親のネット時間が2時間以上の場合:危険度が「2.56倍」に跳ね上がる
父親のネット時間が2時間以上の場合:危険度が「2.35倍」に跳ね上がる
という結果が出ているのです。(Yamada et al.J Epidemiol 2018;28(10):407-410)
子どもに「スマホをやめなさい!」と怒鳴っている親の片手にスマホが握られていては、子どもには響きません。子どもは親の行動を本当によく見ています。
まずは親自身がスマホを置き、ネットの時間を減らすこと。そして、空いた時間でお子さんと目を合わせ、他愛のない会話の時間を増やすこと。この「安心できるリアルな人間関係」こそが、ネット依存に対する最強の予防策になります。
おわりに
ネットやスマホは、現代社会を生きる上で避けては通れない便利なツールです。だからこそ、ただ排除するのではなく、「依存させない使い方」を子どものうちに身につけさせてあげることが、私たち大人の役割です。
一気にすべてを変えるのは難しくても、「まずは今日、親のスマホ時間を30分減らしてみる」「寝る前は紙の絵本を読んでみる」といった小さな一歩から始めてみませんか。
もし、「すでにルールが破綻していて家庭内では手がつけられない」「ゲームをやめさせようとすると暴れる」といった困りごとがある場合は、一人で抱え込まずに、クリニックに相談にきてくださいね。ご家庭に合った解決策を一緒に考えていきましょう。
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