リハビリテーションとは、「再び世間に適応する状態に回復すること」です。ただ子供の場合には、まだ、年齢相当に適応する能力に育っていないという意味ですが、医学的には慣習的に「リハビリテーション」との言葉を用いています。リハビリテーションは、理学療法、作業療法にわかれます。理学療法は、寝返りする、起き上がる、歩く等の基本的な動作能力の機能が低下した場合に回復、維持、予防を担っています。我が国では、脳性麻痺、事故などの後遺症による運動障害を担当しています。作業療法士は、日々の生活に必要な応用的動作、社会的適応力の回復を目指します。
クリニックにおける作業療法は、まずいろいろな感覚を統合していきながら理解や行動を導いていくという「感覚統合理論」に基づいて、発達障害の子供たちの学習、行動、情緒、あるいは社会的発達の向上を目指していきます。いわば、基礎的な積み上げから作り上げていくイメージです。 ですから発達障害の子供たちには、学習が始まる前、あるいは早期の時期に、ぜひ就学前に行っておきたい治療法といえます。発達障害治療の目標は、当たり前にできることを考えながら行うのではなく、自然にできるようにして、将来の学習、行動、情緒の障害を予防的に改善していくことだと思います。
感覚過敏、感覚鈍磨、身体感覚の障害があり、自分の身体の感覚情報をうまく調節することができません。そのため、作業療法では得意な視覚的理解も併用しながら、姿勢、基本的な身体運動から始めて、日常生活や学習に役に立つ機能を身につけていけるよう指導していきます。その結果として、バランス感覚、対人距離感、書字だけではなく、身体感覚から基づいている、感情、不安感なども身につけることができます。
上半身と下半身のひねり、手や足を交互に使う運動、目と手の協調がとれていないために、球技がうまくできない、書字などの手先の運動や不器用さに結びついていきます。将来の学習時の読み飛ばし、ノートのマスの中に収まらない、文字のバランスが悪いなどが生じていきます。そのようなお子さんに対して作業療法では身体の協調運動や目と手の協調などに働きかけを行っていきます。
学習障害は、上記に書いた(2)の注意欠陥多動性障害と合併することも多く、合併している場合には、(1)と(2)の治療方法による作業療法が必要です。
文字を速やかに読むことができない場合(音韻処理)に問題がある場合には、言語聴覚士による訓練が必要となってきます。一方で、視覚情報処理に問題がある場合には、DTVP-3(視覚認知評価)等を用いて、作業療法士が訓練を行います。
知的に高いにもかかわらず、感情の起伏が激しく、「まあいいか」ができないため、失敗を極端に恐れ、挑戦しようとしない子供たち。人への興味よりも人体に対する興味が優先する子供たち、このような子供たちは、小学校低学年から不登校になることも多いようです。理由としては、授業がつまらない、落ち着いて座っている事ができないためすぐに飛び出してしまいます。あまり知られていませんがこのような子供たちは、体のねじり、左右の交差などの身体運動がうまくできないため、座っていることができませんし、文字を書くときに、斜めに体を傾けて手先と指をうまく使って書くことができません。
このような子供たちには、小学校低学年の時から作業療法を行う事により、「まあいいか」「挑戦する心」 「書字の姿勢」等ができるようになり、自信がつくようになっていきます。頭でっかちのこのような子供たちのコンプレックスを早くから改善してあげれば社会適応はよくなり、小学校高学年になる頃には当たり前の子供に変わっていきます。
私たちのクリニックは、小児神経科医・児童精神科医・作業療法士・臨床心理士・公認心理師がお子さんの年齢と状態により協力しながら、大人になるまでの過程の成長を見守ってきました。院長の宮尾益知は、2001年の国立成育医療センターこころの診療部 発達心理科が始まった時から、2014年からはどんぐり発達クリニックで診てきた子供たちは、みな大人になり、社会に出て立派に活動するようになってきています。これからも発達障害の子供たちとしっかり向き合っていこうと思います。
自閉症スペクトラム(ASD) | 注意欠陥多動性障害(ADHD) | ギフテッド | 学習障害(LD) |
姿勢の保持・手先や身体の不器用さ・書字 | |||
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感覚の調整 社会性 形の視え方 |
身体の協調動作 目と手の協調 |
感情コントロール挑戦する気持ち | 視覚認知 |