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どうして発達外来を受診するの?〜主治医を持つメリット〜

どうして発達外来を受診するの?〜主治医を持つメリット〜|どんぐり発達クリニック|発達障害

「発達外来」と聞くと、少しハードルが高いように感じる方もいらっしゃいます。

「うちの子が受診していいの?」「薬を飲まないといけなくなるの?」――そんな声をよく耳にします。

けれど実際の発達外来は、“発達に関する困りごとを一緒に整理し、子どもの成長を見守るための場所”です。

今回は、発達外来を受診する意味や、主治医を持つことのメリットについてお話しします。

■ 長く続く“見守りの軸”になる存在

学校や園では、年度ごとに担任の先生が変わります。先生方はとても熱心ですが、どうしても1年単位の関わりになります。

一方で、発達外来の主治医は、何年にもわたってお子さんの発達の歩みを見守る存在です。

「去年よりどんなところが成長したか」「環境が変わるとどんな反応をするか」といった、長期的な視点でお子さんを理解していくことができます。

お子さんは成長とともに課題の形が変わります。

幼児期の「ことばの遅れ」から、学齢期の「読み書きの困難」、思春期の「気持ちの不安定さ」へと、テーマが少しずつ移っていきます。

そんなとき、長く関わっている主治医がいると、変化の背景を理解した上で対応できるため、その子らしい成長を支えやすくなるのです。

■ 医療的なサポートが受けられる

発達外来では、発達面だけでなく、心や身体の状態も一緒に見ていきます。

たとえば、

●眠りが浅い・朝起きられないなどの睡眠の悩み
●癇癪(かんしゃく)や気持ちの切り替えが難しいときの対応
●集中が続かない、気持ちの波が大きいといった注意・感情の問題

これらに対して、生活リズムを整える工夫を一緒に考えたり、必要に応じてお薬の相談を行うこともあります。

薬は「治すため」ではなく、「少しでも過ごしやすくするため」の選択肢のひとつです。

また、発達外来では血液検査を行うこともあります。貧血や甲状腺ホルモンの異常など、身体的な原因が発達や気分に影響している場合もあるためです。

「体の健康」と「心の発達」は、どちらも大切な基盤です。

■ 心理士や療法士とのチーム支援

クリニックによっては、医師のほかに心理士や療法士(作業療法士・言語聴覚士)が在籍している場合があります。

心理士は、

●発達検査や心理検査を通じてお子さんの特性を詳しく理解する
●カウンセリングを行い、気持ちの整理を手伝う

といった役割を担っています。

また、作業療法(OT)や言語療法(ST)では、

●手先の不器用さや感覚の過敏さを整える練習
●ことばの理解・表現を促すトレーニング
などを行います。

当院でもこれらの療法を受けることが可能で、医師・心理士・療法士がチームで支援しています。

それぞれの専門家が連携することで、お子さんを多面的に理解し、より良いサポートにつなげることができます。

■ 学校や園との連携がスムーズに

お子さんの発達支援では、家庭と学校(または園)の連携がとても重要です。とはいえ、先生方も多忙で、保護者がすべてを伝えるのは負担が大きいこともあります。

そんなとき、主治医は第三者的な後方支援”として関わることができます。

学校との連絡票や情報提供書を通じて、

「こういう場面で困りやすい」「こういう配慮があると力を発揮しやすい」など、医療的な視点から具体的にアドバイスを行います。

医師が間に入ることで、保護者・学校・子どもをつなぐパイプが太くなり、支援の方向性がそろいやすくなります。

■ 各種書類・診断書の作成ができる

発達外来では、お子さんの支援に必要な各種書類を作成することもできます。

たとえば、

●療育を受けるための受給者証の申請に必要な意見書
●精神障害者保健福祉手帳や特別児童扶養手当の診断書
●受験や学校での合理的配慮(試験時間延長・別室受験など)を求める診断書

これらの書類は、支援や制度を利用するうえで欠かせないものです。

主治医がいると、必要なタイミングでスムーズに対応してもらえる点も大きなメリットです。

■ “今すぐ困っていない”時期こそ相談を

「いまは特に問題ないから、受診するほどではないかも」と感じる方もいるかもしれません。

でも、発達外来は“困ったときにだけ行く場所”ではありません。

むしろ、少し気になる段階から相談しておくことで、困りごとが大きくなる前に支援を始められることが多いのです。

たとえば、「最近イライラが増えた」「友達とのトラブルが続く」「学習への意欲が落ちている」―そんな小さなサインからも、お子さんの心や発達の変化を読み取ることができます。

定期的に発達を見守っていくことで、環境の変化(進級・進学・思春期)にも柔軟に対応できます。

それが“主治医を持つ”一番の安心につながります。

■ おわりに

発達外来は、「特別な診療科」ではありません。子どもの成長を長く見守り、必要なときに専門的な支援を受けられる、家族の伴走者のような場所です。

医師はもちろん、心理士や療法士などのスタッフがチームで関わり、家庭・学校・地域と連携しながら、お子さんの“これから”を支えます。

発達は一人ひとり違って当たり前。

だからこそ、「この子らしさ」を一緒に見つけ、育てていくことが、発達外来の一番の役割だと思います。

主治医を持つことは、お子さんの未来に「見守りの灯」をともすことです。

どうぞ気軽に、そして安心してご相談ください。

 

 

院長 藤井 明子
記事監修
院長 藤井 明子

北里大学医学部 卒、東京女子医科大学医学系大学院修了、東京女子医科大学病院、長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、さくらキッズくりにっく 院長、どんぐり発達クリニック 院長

医学博士、日本小児科学会 小児科専門医、日本小児神経学会 小児神経専門医、日本てんかん学会 てんかん専門医、日本小児精神神経学会 小児精神神経学会認定医、子どものこころ専門医

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