
どんぐり発達クリニックの作業療法士です。
今回は、学習や運動をするうえで重要な役割を担っている眼球運動についてお話します。
私たちが、身のまわりにある色々なものを見るときには、様々な視覚機能を働かせています。見たいものが「はっきり見えているか」という視力だけでなく、その情報が「何であるか」を把握し、その情報に「どう反応したらよいのか」を考え、適切に行動することが「見る」という活動になります。
「見る」活動は、
① 目から入る情報(=入力機能)を脳に伝達
② 脳で情報を整理して認識(=情報処理機能)
③ 動作に移すために筋肉に命令を出す(=出力機能)
という「入力機能」→「情報処理機能」→「出力機能」という一連の流れがあります。
生まれてから徐々に発達し、6歳までに「見る」活動の基礎ができます。
今回は、「見る」活動のなかの「入力機能」に関連する【眼球運動】についてお話しをしたいと思います。
【眼球運動】は主に、
①固視(注視)
②輻輳(ふくそう)-開散(かいさん)運動
③追従眼球運動
④衝動性眼球運動
があります。
①固視(注視)
固視(注視)とは、1点のターゲットを視野の中心で持続的に捉え続けることをいいます。②輻輳(ふくそう)-開散(かいさん)、③追従性眼球運動、④衝動性眼球運動などの眼球運動は、この固視(注視)をベースに発達します。
②輻輳(ふくそう)-開散(かいさん)運動
見ているものとの遠近距離に応じてピントを合わせる運動のことをいいます。特に読み書きにおいては、近くを見るための輻輳(寄り目の動き)が重要となります。輻輳は、対象物を近づけていき、ピントがぼけないギリギリの距離(輻輳近点)を調べることで評価をします。
輻輳-開散に不十分さがあると、「黒板の書き写しが苦手で遅い」「人との距離感がつかめず対人トラブルにつながる」「手元の文字が二重に見える」などの困り感につながります。
③追従眼球運動
ゆっくり動くものを目で追いかけるなど、視線を滑らかに移す運動のことをいいます。読字においては、文字列を1文字ずつ正確に捉えるときに重要な役割を果たしています。
追従性眼球運動に不十分さがあると、「本や漫画を読む際に文字を辿るのが苦手」「動いている人やものを負い続けることが難しい」「目が疲れやすい」などの困り感につながります。
④衝動性眼球運動
ある点から別の点へと視線を素早く移す運動のことをいいます。文章を流暢に読むためには、固視(注視)と衝動性眼球運動の組み合わせ(単語のまとまりごとに視線を移動させること)が重要だといわれています。
衝動性眼球運動に不十分さがあると、「読み飛ばしてしまう」「体育が苦手」などの困り感につながります。
今回は【眼球運動】についてお話しをさせていただきました。【眼球運動】は、学習や運動をするうえで重要な役割を担っています。苦手さがある場合には、当院の作業療法で評価ができますので診察時にお気軽にご相談ください。
井川典克・高畑脩平・奥津光佳・荻原広道(2020).みんなでつなぐ読み書き支援プログラム.クリエイツかもがわ.P31-36