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発達特性のある受験生の心を支えるために 〜親が気をつけたいこと〜

発達特性のある受験生の心を支えるために 〜親が気をつけたいこと〜|どんぐり発達クリニック|発達障害

受験の季節になると、多くのご家庭で子どもの勉強や将来への不安が高まります。

特に、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)など、発達特性のあるお子さんを持つ保護者の方からは、

「集中が続かない」「ペースが乱れやすい」「受験に向いていないのでは…」という声をよく聞きます。

発達特性のあるお子さんにとって、受験は学力だけでなく、環境の変化やストレスへの耐性が試される時期でもあります。

今日は、そんな受験期に親として意識しておきたいことを、心と体の両面からお伝えします。

■ 睡眠リズムを一定に保つことが第一歩

ASDやADHDのあるお子さんは、もともと睡眠リズムが乱れやすい傾向があります。

夜遅くまで勉強を続けるよりも、「起きる時間・寝る時間をできるだけ一定にする」ことを最優先にしてください。

睡眠は脳の回復と記憶の整理に欠かせません。

夜更かしして詰め込むより、しっかり眠って翌朝の集中力を高めた方が、結果的に効率が良いのです。

どうしてもリズムが崩れてしまう場合は、漢方薬や寝る前の少量のお薬で整えることもあります。

無理に我慢させるより、専門家に相談してリズムを整える方が安全で確実です。

■ 「好きなこと」を少しだけ保証する

発達特性のあるお子さんは、好きなことに没頭することで心が落ち着いたり、頭の整理がつくことがあります。

受験期でも、「15分だけ読書」「散歩」「お気に入りの音楽を聴く」「好きな食べ物を楽しむ」など、短い“好きの時間”を毎日少しだけ確保してあげてください。

親御さんから見ると「遊んでいて大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、この時間は「心のエネルギー補給」です。

脳は集中と休息を繰り返すことで最もよく働きます。

■ 学校は「安心して過ごせそうな環境」を選ぶ

学校を選ぶときは、偏差値や有名校という視点だけでなく、お子さんがその環境で安心して過ごせるかを基準に考えてみましょう。

たとえば:

●クラスの人数が多すぎず、先生の目が届きやすいか
●授業の進度が速すぎないか
●先生方や生徒の雰囲気が穏やかで、失敗を責めない文化があるか
お子さんが「この学校なら自分らしくいられそう」と感じられるか


実際に学校見学をしたとき、**「この子がこの場所で笑顔で過ごしている姿が浮かぶか」**を目安にすると良いでしょう。

発達特性のあるお子さんは環境の影響を受けやすいため、「合う場所を選ぶこと」そのものが何よりの支援です。

■ 頑張っている姿を認め、変化を見逃さない

発達特性のあるお子さんは、努力しているのに成果が見えにくいことがあります。

でも、「毎日机に向かう」「昨日より少し集中できた」――それだけでも十分立派な成長です。

結果よりも、「頑張っている行動そのもの」を言葉で認めてあげましょう。

「今日もここまでやったね」「前より落ち着いて取り組めていたね」

その一言で、子どもは「見てくれている」と感じ、安心します。

■ 親も「ほっとできる時間」を持つ

受験期は、お子さんだけでなく親御さんにとっても大きなプレッシャーです。

「自分が支えなきゃ」「気を抜いたらダメ」と力が入りすぎると、心も体も疲れてしまいます。

でも、親の安心は子どもの安心につながります。

少しでも自分の時間を持ち、休むことを意識してください。

好きな飲み物をゆっくり飲む、軽く外を歩く、深呼吸をする――それだけでも十分です。

■ 医師・医療機関でできるサポート

受験期のお子さんを支える中で、医療ができることは意外と多くあります。

●睡眠や緊張、不安の相談
睡眠リズムの乱れや強い不安、体調の変化が見られる場合、漢方薬などでサポートすることがあります。心身のバランスを整える助けになります。

●診断書・意見書の作成
入試や学校での合理的配慮(試験時間延長、別室受験など)を希望する際には、医師の診断書が必要になることがあります。
外来では、お子さんの状況を丁寧に評価し、学校や受験機関に伝えるための意見書を作成します。

●家庭・学校との連携支援
学校の先生との情報共有や、家庭での学習環境づくりについても医療側からアドバイスを行います。
「どこまで支援をお願いしていいか分からない」と悩む保護者に、具体的な伝え方を一緒に考えることもあります。

 

医療は“治す場所”ではなく、お子さんと家族がより安心して取り組めるように支える場所です。

困ったときは、どうか一人で抱えずに相談してください。

■ 受験はゴールではなく通過点

受験は確かに大きなイベントですが、人生のゴールではありません。

思い通りの結果でなくても、努力してきた時間そのものが、子どもの力になります。

発達特性のあるお子さんは、結果よりも「過程の中で育つ力」が大切です。

自分を理解し、助けを求め、少しずつ前に進む力――それがこの先の人生の糧になります。

■ 親は「最後に受け止める場所」であり続ける

受験期の子どもは、見た目よりもずっと不安です。

だからこそ、親が「どんな結果でも受け止めるよ」という姿勢を持ち続けることが大切です。

親は、最後に子どもを支えるセーフティーネットであれば十分です。

「頑張ってきたあなたを、私はちゃんと見ている」――この言葉は、どんな励ましよりも強い安心になります。

■ おわりに

受験は、子どもが自分の力で未来に踏み出す大切な機会です。

けれど、その土台には「親の安心」と「家庭の温かさ」があります。

発達特性のあるお子さんは、少し違うペースで成長します。

その違いを理解し、焦らず寄り添うことが最大の支援です。

私たち医療スタッフも、学校や家庭と手を取り合いながら、お子さんが自分らしく学び、笑顔で進んでいけるようお手伝いしていきます。

焦らず、比べず、共に歩む――それが、受験期における一番の「支え方」です。

 

院長 藤井 明子
記事監修
院長 藤井 明子

北里大学医学部 卒、東京女子医科大学医学系大学院修了、東京女子医科大学病院、長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、さくらキッズくりにっく 院長、どんぐり発達クリニック 院長

医学博士、日本小児科学会 小児科専門医、日本小児神経学会 小児神経専門医、日本てんかん学会 てんかん専門医、日本小児精神神経学会 小児精神神経学会認定医、子どものこころ専門医

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