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【院長コラム】「子どもが嘘をつきます」——その心の背景と、大切にしたい向き合い方

【院長コラム】「子どもが嘘をつきます」——その心の背景と、大切にしたい向き合い方|どんぐり発達クリニック|発達障害

こんにちは。院長の藤井です。

診察室で親御さんから受けるご相談の中で、意外と多く、そして切実なものの一つに「子どもが嘘をつくんです」というお悩みがあります。

「宿題をやったと言ったのに、ノートは白紙だった」「テストの点数をごまかした」「友達の消しゴムを持っているのに、もらったと言い張る」……。

わが子の嘘に直面したとき、親御さんはショックを受け、「このまま嘘をつく大人になってしまうのではないか」「育て方が間違っていたのか」と、自分を責めたり、強い不安を感じたりしてしまいがちです。しかし、子どもの心の専門医としての視点からお伝えしたいのは、「嘘をつく」という行為そのものよりも、その裏側にある「子どもの心のサイン」を読み解くことが大切だということです。

今回は、子どもがなぜ嘘をつくのか、そしてその時どう向き合えばよいのかについて、一緒に考えていきましょう。

なぜ、子どもは嘘をつくのでしょうか?

子どもが嘘をつくとき、そこには必ず「理由」があります。大人のように悪意を持って相手を陥れようとする嘘は、子どもの世界では稀です。多くの場合、以下のような理由が隠れています。

・「怒られる」のがわかっているから

最も多い理由です。失敗を叱責された経験が重なると、「本当のことを言って怒られるくらいなら、その場をしのぎたい」という自己防衛本能が働きます。

・自分を大きく見せたいから

「100点をとった」「すごいことをした」と嘘をつくのは、「認められたい」「愛されたい」という承認欲求の裏返しであることが多いです。今の自分では不十分だと感じているとき、嘘の鎧で自分を守ろうとします。

・正直に話すのが「めんどくさい」から

物事の経緯を説明するのが苦手な子や、言語発達に特性がある子の場合、一から説明する労力を避けるために「やってない」「知らない」と短絡的な嘘で済ませてしまうことがあります。

「見守ってよい嘘」と「いけない嘘」の境界線

すべての嘘を厳格に裁く必要はありません。私は、嘘を大きく二つのグループに分けて考えることを提案しています。

1.見守ってよい嘘(家庭内で解決できるもの)

日常生活の延長線上にある、いわゆる「可愛い嘘」や「見栄」による嘘です。これらは成長の過程で見られることが多く、社会的な実害が少ないものです。

例: 「部屋を片付けたよ」「宿題はもう終わった」「テストで100点とったよ(本当は違った)」

2.いけない嘘(将来的な犯罪行為や対人トラブルにつながるもの)

自分や相手を傷つけたり、法に触れるような行為を隠したりする嘘です。これらは放置せず、丁寧に向き合う必要があります。

  • 例: 「友達の物をとった(のに隠す)」「お金をとった」「友達をひどく傷つけた(のにやっていないと言う)」

嘘をついたとき、どう対応すればいい?

それぞれのグループに対して、親御さんがとるべきステップは異なります。

【見守ってよい嘘】への対応:成長の過程に注目する

このタイプの嘘に過剰に反応し、「嘘つきは泥棒の始まり!」と厳しく叱る必要はありません。

「確認」と「受容」をセットに:

「そうなんだね」と一度受け止めつつ、「じゃあ、あとで見せてね」と淡々と確認を促します。嘘だとわかっても、人格を否定せず「本当はやりたくなかったんだね」「100点をとってママを喜ばせたかったんだね」と、嘘をつかざるを得なかった気持ちに焦点を当てます。

「ありのまま」でいい実感を育てる:

自分を大きく見せる嘘をつく子には、「嘘をつかなくても、あなたは十分に素晴らしい存在なんだ」と実感させる体験が必要です。「100点」という結果だけではなく、「前よりここが丁寧に書けているね」「昨日より早く準備ができたね」と、**成長の過程(プロセス)**に注目して声をかけてあげてください。

【いけない嘘】への対応:自分の気持ちを「Iメッセージ」で伝える

友達の物をとったり、誰かを傷つけたりしたことを隠す嘘については、毅然としつつも冷静な対応が求められます。

「I(アイ)メッセージ」で伝える:

「なんであなたは嘘をつくの!(Youメッセージ)」と相手を責めると、子どもはさらに心を閉ざし、次の嘘で隠そうとします。

そうではなく、「あなたが嘘をついて隠していたことを知って、お母さんはとても悲しく感じたよ(Iメッセージ)」と、親自身の感情を伝えましょう。

背景を想像してみる:

なぜ、友達の物をとってしまったのか。なぜ、隠さなければならなかったのか。

そこには「どうしてもその物が欲しかった(衝動性の問題)」や「友達との関係で困っていた」といった背景があるかもしれません。嘘は、耐えがたい現実から自分の心を守るための防波堤になっていることもあります。

専門機関を頼ることも一つの選択肢です

物事の理由や背景を紐解くには、時間がかかることも少なくありません。ご家庭だけで解決しようとせず、学校の先生やスクールカウンセラー、そして私たちのようなクリニックに相談していただくのも良いでしょう。

特に、発達の特性(ADHDによる衝動性や、自閉スペクトラム症によるコミュニケーションの難しさなど)が関係している場合、嘘をつくパターンが決まっていることがあります。そのメカニズムを理解することで、親御さんの心の負担もぐっと軽くなります。

最後に

子どもが嘘をつくのは、彼らなりに「今を一生懸命生き抜こうとしている証」でもあります。

嘘を暴くことよりも、嘘をつかなくても安心して過ごせる環境をどう作るか。それを一緒に考えていきましょう。診察室では、お子さんの「こころの声」に耳を傾けるお手伝いをいつでもさせていただきます。

 

院長 藤井 明子
記事監修
院長 藤井 明子

北里大学医学部 卒、東京女子医科大学医学系大学院修了、東京女子医科大学病院、長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、さくらキッズくりにっく 院長、どんぐり発達クリニック 院長

医学博士、日本小児科学会 小児科専門医、日本小児神経学会 小児神経専門医、日本てんかん学会 てんかん専門医、日本小児精神神経学会 小児精神神経学会認定医、子どものこころ専門医

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