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「読み書き障害と合理的配慮」―子どもの学びを支えるために

「読み書き障害と合理的配慮」―子どもの学びを支えるために|どんぐり発達クリニック|発達障害

先月のコラムでは、読み書き障害についてお伝えしました(「10月は「ディスレクシア月間」―子どもたちの学びを支えるために」)。今回は、合理的配慮についてふれたいと思います。

読み書きに困難のあるお子さん(ディスレクシア)には、学校で「合理的配慮」を受けることができます。

合理的配慮とは、障害や特性のある子どもが他の子どもと同じように学ぶ機会を得られるように、学校が環境や方法を工夫することをいいます。特別な優遇ではなく、「学び方の違い」に合わせた自然な支援です。

■ 読みに困難があるお子さんへの配慮例

読みが難しい場合、文字を処理する負担を減らす工夫が有効です。たとえば次のような配慮があります。

  1. 教科書やプリントを音声で聞けるようにする(読み上げソフト・ICTの活用)
  2. 周囲の大人が文章を口頭で読み上げる
  3. 文字の大きさや行間を広くしたプリントを使う
  4. 難しい漢字にふりがなをつける
  5. 長文を短く区切って提示する
  6. 黒板の板書をプリントや写真で代用する
  7. テスト問題を読み上げてもらう
  8. 音読を強制せず、代わりに聞き取り課題にする
  9. 内容理解の評価は口頭回答でもよいとする
  10. 試験時間を延長し、読む時間に余裕をもたせる

読みの困難は「理解力のなさ」とは違います。読むスピードや処理に時間がかかるため、時間の延長も大切な配慮のひとつです。

■ 書きに困難があるお子さんへの配慮例

書くことが難しい場合は、「書く」以外の方法で学びや成果を表す工夫ができます。

  1. タブレットやパソコンでの入力を許可する
  2. 答えを口頭で伝えてもよいようにする
  3. ノート提出ではなくプリント貼付や音声提出にする
  4. 板書を写す代わりにプリントを配布する
  5. 書く量を減らし、要点のみを書くようにする
  6. テストで選択肢回答(マーク式)を使う
  7. 読み取りを優先し、漢字の正確さにこだわりすぎない
  8. 黒板のコピーや写真の使用を認める
  9. 筆記具を工夫する(太軸ペン、グリップ付き鉛筆など)
  10. テスト時間を延長して、焦らず書けるようにする

書字の困難は「怠け」ではありません。手や指の動き、文字を思い出す脳の仕組みが少し違うために起こるものです。

■ 「何をするか」だけでなく「何をしないか」も大切

合理的配慮というと、何かを「足す」ことに注目しがちですが、実は「減らす」「やめる」ことも重要です。

たとえば、

  • 宿題の量を減らす
  • みんなの前での音読を免除する
  • 書き写しの練習を減らし、内容理解を中心にする

    こうした対応で、お子さんの疲労や自信の喪失を防ぐことができます。

■ 配慮を受けるために大切なこと

合理的配慮は、学校が一方的に決めるものではなく、お子さんや保護者の希望を踏まえて話し合って決めるものです。

「この方法なら安心して学べる」「これは苦手なので別の方法にしたい」――お子さん自身の気持ちを聞くことがとても大切です。

また、テストや入試などで正式に配慮を受ける場合は、医師の診断書や意見書が必要になることもあります。外来などで相談し、診断や検査結果をもとに学校に提出します。

■ 医療と学校・家庭の連携が支えになります

合理的配慮をうまく進めるには、医療・学校・家庭が連携することが欠かせません。

医療はお子さんの特性を整理し、学校と共有するサポートを行います。学校は学習環境を工夫し、家庭はお子さんの頑張りを支える存在です。

お子さんが「みんなと同じように学びたい」と感じる気持ちは自然なことです。合理的配慮は、それを叶えるための大切な仕組みです。

私たちも、学校やご家族と一緒に、お子さんが自分らしく学べる環境づくりを応援していきます。

 

院長 藤井 明子
記事監修
院長 藤井 明子

北里大学医学部 卒、東京女子医科大学医学系大学院修了、東京女子医科大学病院、長崎大学病院、長崎県立こども医療福祉センター、さくらキッズくりにっく 院長、どんぐり発達クリニック 院長

医学博士、日本小児科学会 小児科専門医、日本小児神経学会 小児神経専門医、日本てんかん学会 てんかん専門医、日本小児精神神経学会 小児精神神経学会認定医、子どものこころ専門医

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